ページ

2011/12/09

月刊『医歯薬進学』2012年1月号 補講 メディアリテラシーなど(1)

今月号(2012年1月号)は,「3.11以後の日本とメディア・リテラシー(原発問題を素材に考える)」というタイトルで講義を行なっている。塾のブログでも告知したとおり,今回の講義は,今年(2011年=平成23年)3月11日に起きた未曾有の大震災をテーマとしてるが,震災そのもの,あるいは原発事故そのものをテーマとして考えたものではない。むしろ,今年の入試のみならず,今後の試験問題にも大きなテーマを提供してくれるのは,大震災をめぐる言説のあり方である。

 説明するまでもないが,この大惨事は様々な意味でエポック・メイキングな出来事であった。とりわけ知的な人間であろうとする私たち受験生や教師たちにとっては,いままでの物の考え方そのものを根本的に見直さざるをえなくなったという意味においても,大きな変化を強いる大事件であった。

 政府やメディアによる報道,科学者の発言や分析について,どのような態度で向かい合い,どのようにして意見を構築したり,意思決定したりすればよいのだろうか,という疑問は,素朴なレベルでは,マスコミの報道や町の声(TVのインタビューやSNSなどWeb上でのおしゃべり)においても聞くことができる。しかし,この「疑問」は,たんなる不平不満(ぶーたれて文句を言うこと)を超えて,真剣に向き合い,解決すべく努力しなければならない「課題(問題)」なのである。

 要するに,何が言いたいのかと言うと,大学入試で出題されるポイントがあるとすれば,まさにココである,ということである!

 「ココ」というのはどこ?
・震災をめぐる報道やメディアのありかた
・「メディアリテラシー」の必要性
 →批判的・分析的読み,それらを経た発言,それから,これらを踏まえた「市民的身だしなみ」(民度!)
・「クリティカルシンキング」「サイエンティフィック・リテラシー」の必要性

 これらがポイントである。中長期的に,社会の課題,科学の課題として,公共的市民が考えていかなければならないようなテーマは,まさにこれらなのだ。

 いま,さまざまな予備校や出版社が,「3.11以降の小論文・面接問題」の予想を立てているが,これらの問題に触れていないものは,まったく的外れであるので気を付けた方がよい。防災対策や震災後のセラピーなどについても,もちろん問題としての重要性がないというわけではないが,これらは,短期的でかつ専門的すぎるテーマである。

 一方,小論文で問われるのは,社会的になかなかコンセンサスが得られないような,中長期的なテーマで,かつ,生き方や考え方(倫理や思想)が深く関係しているようなテーマである。したがって,大震災以降の中長期的な課題として今後ますます考えなければいけないようなテーマについて,まず受験生である皆さんが考えておく必要があるのである。(大学の先生方=出題者も,自分では答えがまだはっきり見つからないようなテーマを出題したがる。かく言う私とて同じである。。。)

 続きは,12/12日の発売後に!